EK SHOOTING EYE 2000.9 No.38より(承認済)
学生時代はちょうど8mm映画ブームで、私も自分でカメラを廻していましたね。それでもあまり足を運んでいなかった映画館へも度々行くようになり、今はなき新宿のATGへは足繁く通ったのを憶えています。難解な作品が多かったので、何度も同じ作品を見ました。 この頃8mm映画製作の資金稼ぎとしてアルバイトをはじめました。ピンク映画の渡辺護監督がスタッフを募集しているのを知り、せっかく8mmを撮っているのだから、この業界でアルバイトした方が学べることも多いと思い、下働きとして入りました。現実は想像を絶するハードさでしたが、それ以上におもしろいと感じる気持ちの方が大きく、”はまってしまった”というのが本音です。 東京映画出身の伊東英男キャメラマンと出会ったのは卒業してからのことです。撮影助手のそのまた見習いとして仕事をさせていただきました。当時は今以上に女性の撮影部が珍しい存在で、どの現場に行っても驚かれることが多かったですね。受け入れる側にはどう扱っていいのかわからないという戸惑いがあったようです。私の方は夢中だったのでまわりの目はあまり気になりませんでしたが、知らないうちにずいぶん迷惑をかけてしまったこともあると思います。ただはじめは気を使ってくださった方も、現場が始まってしまうとそうも言ってられない状況ですから。
●両輪のバランスが大切
映画にくらべて歴史の浅いコマーシャル業界は、女性の私にとってよりフランクで入り込みやすかったですね。押切隆世キャメラマンをはじめ、多くのコマーシャルキャメラマンにお世話になりました。 私のスチール写真集「木造校舎の思い出」を撮るきっかけになったのも、コマーシャルの仕事でした。とある文房具メーカーの撮影で、舞台となった木造校舎が、あと数日で壊されてしまうと聞いたんです。撮影待ちの時間に校舎の中を歩いてみると、光と影の印象がとても感動的で、これが数日後になくなってしまうのか!と思ったら、スチールカメラを買い求めに走っていました。ここから全国行脚がはじまったんです。 スチール撮影は個人作業ですから、自分の心にあることを120%やり遂げることができ、自分の心を深めていける意味で大切です。それに対して映画やコマーシャルの仕事は皆でよりよいものを作り出していく、それぞれの力を出し合って「1+1=3」になる魅力、これはたまりません。今後も両方をバランスよくこなしていきたいですね。
●自分色を持ち続けること
ビデオで何回も見て、おもしろいと思っている作品を、久しぶりにスクリーンで見ると、 その何倍もおもしろく、違った作品に見えてしまうことさえあります。 「火星のわが家」撮影現場。中央が大島拓監督。 当たり前のことですが、画面が大きいと作り手のこだわりがこわいほどよく見えますよね。ビデオ映像に携わっている人が大きな画面で見る機会がもっと増えれば、映画や映像の楽しさをさらに知ってもらえると思います。 また「一度はフィルムの仕事をやってみたい、でもコストが高いし、作業が面倒そうだから」と逡巡している若いクリエイターに対してサポートできるようなシステムや働きかけを、フィルムメーカーやラボ、機材屋さんなどがどんどん取り組んで、裾野を広げてほしいですね。めまぐるしく変貌している映像制作状況の中で、一度でも「フィルム体験」をしておくことが、将来すごい財産になると思うんです。 元気な人はみな女性といっても過言ではないほど、女性の活躍が目立ちます。専門学校などが増えたことで、やる気のある人がどんどん出てこれる環境が整ったのはうれしいことです。彼女たちには、これから飛び込んでいこうとしている世界で学び、鍛えられる機会が本当にたくさん待っています。ただ技術的に細かいことを学んでいると与えられたことをクリアすることが目的化しがちで、ともすると自分がやりたいことを忘れてしまいます。いざ好きなことができる状況になったとき、何をやっていいのかわからなくなってしまったことは自分にもありました。だからやりたいことをつきつめていく姿勢、やりたいことに関してはわがままになっていく心構えは持ち続けてほしいんです。